AIエージェントとは?初心者でも3分でわかる基礎と活用法

生成AIをさらに超える存在として注目を集めている「AIエージェント」。
「一体何がすごいのか?生成AIと何が違うのか?」
このように感じている方も多いのではないでしょうか。

本記事では、DXやIT業界でエバンジェリストとして活動する筆者が、AIエージェントに関する以下のポイントを詳しく解説します。

この記事でわかること

 

AIエージェントとは?

まずはAIエージェントの特徴について具体例とともに解説します。

特徴①:自律性


最初の特徴は「自律性」です。従来の生成AIは人間の指示に対して動作するものでした。しかし、AIエージェントは事前に目標やルールを定義しておくことで、人間の指示なしで意思決定を行います。

項目 従来のAI AIエージェント
人間の指示 あり(例.[指示]メールの返信内容を考えて) なし(事前に目的やルールを定義)
AIのアウトプット 指示に従いメールの返信文を作成 顧客から来たメールの内容に応じて必要な情報を自身で取りに行き、適切な返信文を作成

 

特徴②:実行力


2点目の特徴は「実行力」です。AIエージェントが従来のAIと決定的に違う点は「実際にアクションの実行まで行う」という点です。先ほどの例でいうと以下のような形になります。

項目 従来のAI AIエージェント
人間の指示 あり(例.[指示]メールの返信内容を考えて) なし(事前に目的やルールを定義)
AIのアウトプット 指示に従いメールの返信文を作成 顧客から来たメールの内容を見て自律的に適切な返信文を作成
AIの行動 なし(文章の作成までで終了) 顧客への返信の実行

 

特徴③:社会性


3点目の特徴は「社会性」です。AIエージェントは他のエージェントやシステム、人間とコラボレーションをしながらタスクを実行します。
例えば、以下のような形です。

目標:営業活動での商談獲得
  • CRMのエージェント(①)が見込み顧客リストを取得
  • ①が分析エージェント(②)にデータを渡し優先ターゲットを抽出
  • ②からマーケティングエージェント(③)にターゲットを引き渡し
  • ③がプロモーションメールを作成し送付
  • プロセスの中で問題がある場合、各エージェントが人間にチャットで質問

 

各エージェントが自立性と実行力を持っていることによって、まるで人間が働いているのと同じようにエージェント同士が協力して業務を進めます。

 

特徴④:タスクの連続性

4点目の特徴は「タスクの連続性」です。従来の生成AIと異なり実際の「実行」まで行うことができるため、データ収集 → 分析 → 提案 → 実行 → 結果のフィードバックと改善といった一連のフローを一気通貫で行うことが可能です。

特徴⑤:自己学習

最後の特徴は「自己学習」です。AIエージェントは、実行したタスクや得られた結果を元に自ら改善を重ね、より高度な意思決定やタスク実行を可能にします。例えば、以下のような形で自己学習を行います。

項目 従来のAI AIエージェント
フィードバック対応 人間がフィードバックを与える必要がある タスク結果を自ら解析し改善点を学習
タスクの改善 人間が手動で改善方法を設定 実行結果を元に次回のタスク精度を自律的に向上
適応力 過去のタスクに依存 新しい状況にも迅速に適応

以下に、AIエージェントがカスタマーサポートの分野で自己学習を活用するシナリオの例を見て見ましょう。

例.カスターサポートにおける自己学習
  • 顧客からの問い合わせ内容を分析し、共通するパターンを特定
  • 過去の回答データベースを参照して応答精度を向上
  • 顧客の満足度フィードバックを元に、回答フレームワークを改善
  • 新しい問い合わせタイプが発生した際、他のエージェントやデータから学習して対応を最適化

 

この自己学習能力により、AIエージェントは単なる自動化ツールを超えた、進化するパートナーとして業務の中で活躍します。

さて、ここまでAIエージェントの特徴について見てきました。ここからは、これらの特徴を踏まえた上でAIエージェントにより業務がどのように変わるのか具体的な例と共に見ていきましょう。

 

AIエージェントと生成AIの業務の流れの比較

 

従来の生成AIでの業務の流れ

これまでのChatGPT等の生成AIでは以下のような形で都度人間がAIに指示を行い、それに対してAIが成果物を生成する流れで業務が進んでいました。

  • [指示]特定の役職やセミナー参加履歴のある顧客を抽出して
  • [指示]資料の骨子を作成して
  • [指示]このメールへの返信を書いて

 

従来の生成AIでの業務を図解すると以下のような形です。

 

AIエージェントでの業務の流れ

それに対してAIエージェントを活用した業務フローでは、以下のような一連の業務が人間の手を介することなく自律的に実行されます。

  • ターゲット顧客を自動で抽出
  • 個別化された資料を自動で作成
  • 自律的にメールを作成し送付
  • 顧客から返信があれば自律的に打ち合わせを設定
  • 顧客から質問があれば自律的に回答
  • 不明点や人間の対応が必要なシーンで人間に連携

 

AIエージェントを活用した業務を図解すると以下のような形です。

 

 
生成AIが人間の補助ツールとしての性質が強いのに対して、AIエージェントは人間が行っている業務や活動を部分的に代替することが可能である点が大きな特徴です。

 

AIエージェントと生成AIの特徴の比較表

改めてAIエージェントと生成AIの特徴を比較すると、以下のような形になります。

項目 従来のAI AIエージェント
目的 情報の解析・予測を提供 情報の解析に基づき、具体的なアクションを自律的に実行
タスクの範囲 決められた範囲の分析や提案 分析から提案、実行、フィードバックの全プロセスをカバー
柔軟性 決められたルールやパターン内でのみ動作 環境や状況に応じた柔軟な対応が可能
意思決定プロセス 人間が最終的な意思決定を行う必要がある 自律的に意思決定し、アクションを実行
具体的な行動 行動は人間の指示や別システムに依存 自律的に行動し、外部システムと連携も可能
活用シナリオ 情報提供やサポートに留まる 一連の業務フローを自律的に遂行
価値提供のレベル 補助的(人間のサポート) 主体的(業務プロセスの自動化)
ユーザーへの依存度 高い(操作や意思決定が必要) 低い(自律的に完結するタスクが多い)
そんなAIエージェントですが、今後どのように活用が進むのでしょうか。ここからはAIエージェントの具体的な業務への活用シーンについて見ていきたいと思います。

AIエージェントの活用事例

営業活動における活用シーン

  • 製品に関する質問や返信に24時間自律的に対応
  • アポイントの設定を自律的に実施
  • 事前設定した任意のタイミングで営業担当者に引き継ぎ

引用:Salesforce Agentforce

カスタマーサービスにおける活用シーン

  • 過去の購入履歴・好み・行動を基にしたbotでの顧客対応
  • 重要な情報は人間の担当者に引き継ぎ
  • 顧客との会話からオペレーションの改善余地を抽出

引用:Zendeskブログ

社内ITヘルプデスクにおける活用シーン

  • 従業員からのパスワードリセットの要求を自律的に処理
  • 従業員からの技術的な質問に社内ナレッジを自律参照してチャットで回答
  • 従業員からの問い合わせを適切なチームに割り振り

引用:atomicwork 公式ブログ

 

海外では既にチャットでの顧客対応の初動の全てをAIエージェントが担い、人間なしで約3割の問い合わせを自己完結で解決する事例なども出てきています。活用シーンの詳細については以下の記事もご覧ください。
AIエージェントの活用事例7選|具体的な業務での活用シーンを解説

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AIエージェント導入のメリット

ここからはAIエージェント導入のメリットについて見ていきましょう。

人手不足の解消

今後ますます深刻化することが予想される人手不足の解消が期待されます。

本記事でここまで紹介したケースはデスクワーカー系の業務が中心でしたが、今後は機械の中にもAIエージェントが搭載されるのが当たり前になってくることが見込まれていますので、一部のフィールドワーカーの業務も代替することができるようになってくると考えられます。

業務効率化と属人化の解消

AIエージェントによって業務効率化はもちろん、業務の属人化を排除して標準化することが期待されます。

24時間365日対応

AIエージェントは24時間365日対応しますので、顧客満足度の向上や営業活動の機会損失の減少が期待できます。

多言語対応

AIエージェントは多言語対応が可能です。今後インバウンド需要の増加が見込まれる中で、言語の壁を超えたスムーズな業務の実行が期待できます。

 

AIエージェント導入に向けた課題

ここまで、AIエージェントのユースケースやメリットなど良い点を見てきました。ここからはAIエージェント導入に向けた課題について見ていきたいと思います。

導入工数の高さ

AIエージェント導入に向けた課題として、導入工数の高さがあげられます。自律して稼働するというメリットは逆を返せば勝手にインシデントをしないよう事前の定義や制御およびテストを綿密に行う必要があることを示しています。

データ整備の遅れ

先ほど紹介した活用ケースのようにAIエージェントが顧客情報・社内ドキュメントを参照して自律的に業務を進めるためには、適切な箇所に適切な形式でデータが入っていることが必要不可欠です。データがバラバラ、歯抜けになっている、形式が違う、レガシーシステムで参照できないなどの問題は、AIエージェント導入に向けた障壁となります。

継続的な運用改善への対応

AIエージェントの導入は構築して終わりではありません。顧客ニーズの変化や社内状況の変化に応じた運用変更、AIの解決状況や目標に対するパフォーマンスに対しての改善を継続的に行う必要があるため、その点での人材面・費用面でのリソースの確保が必要となります。

このように、AIエージェントの導入に向けてはまだまだ課題も多く残ります。まずは負荷の大きい対象の業務範囲を決めてスモールスタートし、徐々に拡大していくのが良いでしょう。
詳細なAIエージェント導入ステップやポイントについては以下の記事で解説しています。
AIエージェント導入ガイド:ツール選定ポイントから費用まで徹底解説

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2025年からのAIエージェントの展望

最後に、2025年以降のAIエージェントの企業での活用がどのように進んでいくのかについて見ていきましょう。

グローバル市場におけるAIエージェント市場の成長

AIエージェント市場はグローバルにおいても爆発的な成長が見込まれています。

米国の市場調査機関によると、AIエージェントの市場規模は2024年の51億米ドルから2030年には471億米ドルに成長し、2024年~2030年の年間平均成長率(CAGR)は44.8%と予測されています。

ITサービス全体が約10%程度、クラウド市場が約15~20%と言われている中で、非常に高い成長率が見込まれています。


引用:MarketsandMarkets, AI Agents Market - Global Forecast to 2030

日本におけるAIエージェント導入の展望

では日本におけるAIエージェントの導入はどのように進んでいくのでしょうか?これは私が付けた区分なのですが、おそらく2025年からAIエージェントは以下の表の「AIエージェント1.0」でスタートし、徐々に「AIエージェント2.0」に移行していくと考えています。
段階 特徴 営業活動での例
汎用AI 汎用的な質問応答や情報提供を行うAI。タスクをこなすには人間の介入が必要。 ターゲットリストの作成方法を教える、営業メールのテンプレートを提案する。
AIエージェント1.0 特定のタスクを自動化。タスクを進める途中で人間の確認が必要。結果を下書きやドラフトとして提供。 - ターゲットリストを自動抽出
- その後CRMや過去資料を参照し資料を自動作成
- その後個別化した営業メールを作成し、送信準備まで完了
(送信は人間がボタンを押す)
AIエージェント2.0 完全に自立してタスクを実行。人間の介入なしにプロセスを進行し、適応的な対応が可能。 - ターゲットリストを作成し、営業メールを送信
- 返信内容を解析し、自動で次のアクションを実行
- アポイントメント設定やフォローアップを完全自動化
これまで人間が行なっていた業務の一部をAIエージェントが代替し、特定のタイミングで判断や実行を人間が介在。AIエージェント活用が進むほど人間の介在箇所が減ってくる流れで導入が進んでいくのではないかと考えています。(AIエージェント1.0から2.0へシフト)

まとめ:AIエージェントとは?

いかがでしたでしょうか。AIエージェントは従来の生成AIとは大きく異なる性質を持っており、既存の業務プロセスを劇的に変える可能性を秘めています。
2025年はAIエージェント元年となって益々活用が進むことが予想される中で、本記事が参考になれば幸いです。

導入を検討されている方はまずは専門ベンダーの無料診断サービスや無料相談を活用してみることもおすすめです。

具体的なAIエージェント導入支援会社については以下の記事で解説していますのでご覧ください。
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