AIエージェント導入ガイド:ツール選定ポイントから費用まで徹底解説

AIエージェントの導入を検討しているけれど、「どこから始めればいいのか」「自社に合ったツールは何か」迷っていませんか?

そこで本記事ではDX・IT業界でエバンジェリストとして活動する筆者が以下の内容についてお伝えします。適切な導入方法を知り、ビジネスを一歩先へ進めましょう。

この記事でわかること
  • 導入の5つのステップ
  • ツールの選定方法
  • 具体的な導入ケース
  • 費用の考え方

 

そもそもAIエージェントとは

AIエージェントとは、目的遂行に向けて自律的に一連の業務を実行する人工知能のことです。生成AIが人間の指示に応じて成果物までに留まるのに対して、AIエージェントは自律的に状況を判断、必要なデータを自身で収集しながら実際の業務の実行まで行います。

例.AIエージェントで自動化する営業業務
  • ターゲット顧客を自動で抽出
  • 個別化された資料を自動で作成
  • 自律的にメールを作成し送付
  • 顧客から返信があれば自律的に打ち合わせを設定
  • 顧客から質問があれば自律的に回答
  • 不明点や人間の対応が必要なシーンで人間に連携

 

AIエージェントの定義や詳細な解説については以下の記事をご覧ください。

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AIエージェント導入の5ステップ

それでは早速、AIエージェントの導入ステップについて見ていきましょう。

ステップ1:課題の整理とスコープ決定

AIエージェントは自律的にデータを集め、判断、実行するため、従来のIT化に比べて爆発的な生産性の向上が期待されます。しかし、その分

  • 自律して動くが故に綿密な設計が必要
  • AIの精度向上のチューニングが継続的に発生
  • インシデントにならないようテストが必要
  • セキュリティやデータアクセスの細かい設定が必要

など、導入時・導入後共に従来のIT化以上に多くのことが求められます。

解決効果も大きいが、導入工数も大きいため、これまでのITプロジェクト以上に現状の自社の課題の明確化と優先順位付けが重要になってきます。

ステップ1の詳細
  • 1-1.現在人力で行っている業務を洗い出す
  • 1-2.各業務に掛かっている時間を可視化する
  • 1-3.工数が大きい順に並び替える
  • 1-4.工数と事業インパクトを加味して優先順位付け
  • 1-5.導入スコープと計測KPI決定

 

結局想定効果に対して費用がかかりすぎてしまった、AIエージェントが思ったパフォーマンスで動かなかったという事態を避けるためにも、事前の計画を綿密に行う事が重要です。

 

ステップ2:データ整備とシステム環境の確認

AIエージェントの導入成功には、質の高いデータと適切なシステム環境が欠かせません。AIエージェントはデータを基に自律的な判断を行いますが、データが散在していたり、正確性に欠けていたりすると、期待する効果が得られない可能性があります。

ステップ2のチェックポイント
  • 今回の目的を遂行するエージェントにはどのようなデータが必要か
  • 必要なデータはAPI連携が可能か、不可能な場合どのように連携するか
  • そもそも過去のデータはどの程度の正確性があるのか
  • そもそも過去のデータの形式やラベル付けは問題ないか

 

ステップ3:ベンダー選定と比較

さて、いよいよ具体的なAIエージェントのツール選定です。このステップでは、情報の箱(データベース)とAIエージェントを分けて考えると、取るべき選択肢が見えやすくなります。

現状、AIエージェントの導入には大きく分けて2つのアプローチがあります。1つ目の「箱一体型」は、これまでSaaSを提供していた企業がSaaS上にAIエージェントを搭載する形のアプローチで、主にSalesforceのAgentforceやZendeskなどが該当します。図解すると以下のような形になります。

2つ目の「組み合わせ型」は、ChatGPT・ClaudeなどのAIエンジンをベースにAIエージェントの仕組みを構築するアプローチです。

先ほどの図に比べると、必要なモジュールを組み合わせながらAIエージェントの仕組みを構築していることが分かります。

以下に改めて特徴と具体例をまとめました。

項目 箱一体型 組み合わせ型
概念 データベース(箱)とAIエージェントが統合されており、既存システムに即座に組み込める形態。 独立したデータベースとAIエージェントを組み合わせて使用し、柔軟なカスタマイズが可能な形態。
特徴
  • 導入が迅速で、初期設定が簡単
  • 既存データベースと緊密に連携
  • 特定業務に既にAIがチューニング済み
  • 業務プロセスに応じた柔軟なカスタマイズが可能
  • システムやデータベースを複数横断した連携に強い
  • 設計の自由度が高い
具体例
  • Salesforce Einstein
  • Zendesk AIエージェント
  • OpenAI+Dify
  • Claude+Dify

 

このプロセスでは、自社の現在の活用ツールやステップ1で整理したプロジェクトのスコープを元に最適なツールを選定する事が重要になります。この後の章の具体的な導入ケースで詳細を解説します。

 

ステップ4:導入計画の立案

AIエージェントの導入計画では、従来のITプロジェクトとは異なるAI特有の視点が重要です。以下のチェックポイントを活用して、現実的かつ効果的な計画を立てましょう。

具体的な目標は設定しているか

AIエージェントは目的達成型のツールです。例えば、「問い合わせの自己解決率を30%にする」など、具体的かつ測定可能な目標を設定することで、導入後の効果を正確に評価できます。

導入する業務範囲は特定のプロセスで、イタズラに広すぎないか

初期段階で業務範囲を広げすぎると、AIエージェントのパフォーマンスが分散し、期待する成果が得られない場合があります。まずは特定のプロセスに限定し、スモールスタートで開始しましょう。

小さなゴールを達成したのち段階的に範囲を広くする計画を立てているか

AIエージェントは運用データを基に成長します。初期段階で小さなゴールを設定し、それを達成した後に対応範囲を拡大することで、効率的かつ効果的な導入が可能です。

期待パフォーマンスを出すためのデータにアクセスできるか

AIエージェントの性能は、学習に使用するデータに大きく依存します。自社で必要なデータにアクセスできるか、データの質と量が十分かを事前に確認してください。

ステップ5:実行と継続的な改善

計画を基に導入を実行する際には、段階的かつ綿密なアプローチが求められます。以下のステップを参考に進めましょう。

5-1. 小規模に試験運用し、初期の問題を発見

導入初期は小規模な範囲でAIエージェントを運用し、初期の課題や不具合を発見します。例えば、問い合わせ対応の一部をAIエージェントに任せ、その結果を詳細にモニタリングすることが有効です。

5-2. 計画で設定した目標との乖離を確認

試験運用の結果をもとに、設定したKPIや目標と実際のパフォーマンスを比較します。この段階で目標達成に向けたギャップを特定することが重要です。

5-3. データソースやプロンプトを見直しトレーニング

初期の問題を解決するため、データソースやAIエージェントへの指示(プロンプト)を見直し、再トレーニングを行うことでAIエージェントの精度が向上します。

5-4. 本番環境へ段階的に導入

課題を解決した後、AIエージェントを本番環境に段階的に展開します。一度に全体へ導入するのではなく、部署ごとやプロセスごとに展開し、各段階でパフォーマンスを確認します。

5-5. 継続的な改善

AIエージェントの導入は、初期導入で完了するものではありません。運用中に得られるデータや現場からのフィードバックを基に、継続的な改善を行うことで、エージェントのパフォーマンスを最大限に引き出すことができます。

AIエージェントのプロジェクトでは、従来のITプロジェクト以上に導入後も継続的なチューニングや運用が必要になります。導入時には、AIエージェント導入を検討する際には、この点も踏まえたリソース計画を行うことが重要です。

具体的な導入ケース

さて、ここまでAIエージェントの導入ステップについて見てきました。ここからは、具体的な導入時のステップについて先ほどの2つのパターンで見ていきたいと思います。

ここで、先ほどの2つのパターンについて簡単に振り返りたいと思います。

項目 箱一体型 組み合わせ型
概念 データベース(箱)とAIエージェントが統合されており、既存システムに即座に組み込める形態。 独立したデータベースとAIエージェントを組み合わせて使用し、柔軟なカスタマイズが可能な形態。
特徴
  • 導入が迅速で、初期設定が簡単
  • 既存データベースと緊密に連携
  • 特定業務に既にAIがチューニング済み
  • 業務プロセスに応じた柔軟なカスタマイズが可能
  • システムやデータベースを複数横断した連携に強い
  • 設計の自由度が高い
具体例
  • Salesforce Einstein
  • Zendesk AIエージェント
  • OpenAI+Dify
  • Claude+Dify

ここからは、具体的な状況とその状況に適したアプローチは何かを確認していきます。

"箱一体型"が向いている事例

まずは箱一体型が向いている3つのケースを見ていきましょう。

「営業やカスタマーサポートなど、箱一体型の各社が強みを持つ領域でのAIエージェント導入」、「即戦力のAIエージェントをすぐに使いたい場合」、「既にSaaSにデータを蓄積している場合」等は箱一体型が向いているケースに該当する可能性が高いです。

ケース①:主に顧客サポート業務に活用する場合

項目 内容
Eコマース企業のカスタマーサポート
特徴
  • Zendeskの対応領域である問い合わせ対応やFAQの自動化が主な目的。
  • ZendeskのAIエージェントを活用することで、サポートチームの効率を即座に向上。
利点
  • 顧客データベースとAIエージェントが密接に連携して動作
  • 柔軟なルール設定やアクセス制御を簡単に実現

ケース②:迅速に導入し、すぐに効果を出したい場合

項目 内容
中小企業のカスタマーサポート
特徴
  • 導入リソースや技術スキルが限られている中で、迅速に実装したい
  • SalesforceやZendeskを導入することで、既存のデータベースとAIエージェントが統合され、短期間で効果を実感可能。
利点
  • 設定やカスタマイズの手間が少なくすぐに使える
  • 特定業務に特化したチューニング済みAIのためパフォーマンスが安定

ケース③:大規模な顧客データを既に持っている場合

項目 内容
大手不動産企業の顧客管理
特徴
  • 既にCRMツールを活用して膨大な顧客データを管理している。
  • Salesforce Einsteinを使うことで、データ分析や次のアクション提案を自動化。
利点
  • データ接続からルール設定をすぐに実現可能
  • 特定業務に特化したチューニング済みAIのためパフォーマンスが安定

"組み合わせ型"が向いているケース

次に組み合わせ型が向いている3つのケースについて見ていきましょう。

「独自の業務プロセスやカスタマイズ性が求められる場合」、「複数のシステムを横断する場合」、「コスト効率を重視して小規模からスタートしたい場合」等は組み合わせ型が向いているケースに該当する可能性が高いです。

ケース①:独自の業務プロセスやカスタマイズ性が求められる場合

項目 内容
特殊な製造業プロセスにおけるデータ活用
特徴
  • 業界特有のプロセスやワークフローを持つ企業。
  • OpenAI APIを活用し、業務に合わせたプロンプトやカスタムアプリを構築。
利点
  • 独自の業務要件に合わせて柔軟に調整可能。
  • ベンダーに依存しない独立性。

ケース②:複数のシステムを連携させたい場合

項目 内容
サプライチェーン管理システム
特徴
  • 在庫管理、物流、販売データなど複数のシステムを連携する必要がある。
  • Google Gemini APIを使って、既存データベースから必要な情報を抽出し、自動化。
利点
  • 他のシステムやクラウドプラットフォームとシームレスに統合可能。
  • 高い拡張性と柔軟性。

ケース③:運用のコスト効率を重視し、小規模からスタートしたい場合

項目 内容
スタートアップの営業支援
特徴
  • 限られた予算で必要最小限の機能から始めたい企業。
  • OpenAIの従量課金モデルを活用し、月間利用量に応じたコスト管理が可能。
利点
  • 箱一体型に比べて中長期的な運用費用を抑えられる可能性が高い。
  • 必要に応じて機能を段階的に拡張可能。
どの業務のどの範囲に導入するのか、またどの程度の自由度と柔軟性を求めるのかによって適切なツール選定を行うことが重要になります。

具体的な導入シーンについては以下の記事をご覧ください。

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AIエージェント導入の費用の考え方

AIエージェント導入に発生する主な費用の項目は以下です。

主な導入費用
費用項目 説明
API利用料・会話あたり料金 利用したトークン数やリクエスト数に基づいて課金される費用。 例.OpenAI(API利用料)・Salesforce(会話1件)
初期導入費用 既存のデータベースやシステムとAIエージェントを統合するための初期設定やデータ整備にかかる費用。 システムインテグレーション、データクレンジング
ハードウェア・インフラ費用 クラウドサービスやオンプレミス環境の構築・運用に必要な費用。 AWS、Google Cloud、物理サーバー
トレーニング・学習コスト AIエージェントのトレーニングやモデル最適化にかかる費用。 カスタムモデルの作成、プロンプト最適化
運用・保守費用 AIエージェントの継続的な運用、データ更新、トラブル対応にかかる費用。 データ更新、ベンダーサポート

従量課金単体での比較ではSalsforceの会話1件の価格が240円に対して、Open AI APIで同様の仕組みを回した際は想定20円〜50円と大幅に差があります。

しかし、Open AI APIを選択した場合はAIエージェント化の構築や設定費用、さらにAIのトレーニングの費用はSalesforceを利用する場合以上に発生することが予想されます。

結果、従量課金以外の費用を加味すると実は割高になる可能性や、さらにその費用をかけても思ったパフォーマンスにチューニングする事ができないなどのリスクもあります。

 

まとめ:AIエージェント導入ガイド

AIエージェントは、業務効率化やビジネス成長を促進する強力なツールです。成功する導入のためには、課題の整理、データ整備、適切なツール選定、計画的な導入と改善の5つのステップが鍵となります。

また、自社の目的と状況を照らし合わせて、どちらのタイプのAIエージェントが向いているのかを考えることも重要です。

  • 箱一体型:迅速な導入や既存システムとの統合に向いている
  • 組み合わせ型:柔軟なカスタマイズや複数システムの連携に向いている

 
費用面においては従量課金の金額比較に留まらず、初期導入や運用コストも考慮し総合的に判断しましょう。AIエージェントの活用は爆発的な生産性向上の可能性を秘めています。2025年に向けて各社の活用が進む事が予想されていますので、導入を検討されている方はまずは専門ベンダーの無料診断サービスや無料相談を活用してみることもおすすめです。

具体的なAIエージェント導入支援会社については以下の記事で解説していますのでご覧ください。
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