働きやすい職場を作ることは、従業員のモチベーションや生産性向上に大きく影響します。実際に、従業員の欲求を満たすことができる職場は、離職率が低く、従業員の定着率が高いと言われています。
この記事では、働きやすい職場環境にするための15のチェックポイントについて5STEPに分けて解説します。
ここまで読んでみて、「15も観点があるのか...」「どこから手をつけたら良いか分からないな」と感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで本記事では、マズローの承認欲求と職場環境を紐付けて5STEPに分類を行いました。この分類によって、職場環境のどのポイントから改善に着手すべきなのかが特定しやすくなっています。
詳細については記事の本編で解説しましたので、ぜひ最後まで記事をご覧ください。
なぜマズローの5段階欲求と職場環境??
さて、このマズローの承認欲求を職場環境に当てはめてみましょう。まずは「生理的要求」に当たるのが生活する上での基盤となる基本給や福利厚生となります。
例えば、どんなに居心地が良くて好きなことをできる職場でも、基本給が15万円を切っている場合などですと東京の場合は生活していくことが難しいのではないでしょうか。
これは、「所属と愛の欲求や承認欲求が満たされていても」よりベースとなる基本的な欲求である「生理的欲求」が満たせない状態です。このような場合、従業員の方は転職をするという選択肢を選ぶ可能性は高いと考えられます。
こちらは2023年の「離職理由に関するDODAの調査」です。
実際に転職理由が「給料(紫色)」の理由から、年代が上がるごとに「社内の雰囲気(緑色)」に移っている事がわかります。
一概には言えませんが、年代が上がり生活基盤が安定するほど生理的欲求に近い給与の部分から、安全欲求や所属欲求に近い社内の雰囲気に重要度が移っていくと言えるのではないでしょうか。
マズローの5段階欲求に当てはめるメリット
マズローの承認欲求は基本的な欲求から満たす必要があるという性質を持っています。
そしてこの「基本的な欲求から満たされる」という性質は「何が離職の原因なのかを特定しやすくする」というメリットがあります。
例えば、第二の欲求である「安全欲求」。この欲求に該当するのが「残業時間」「健康状態」「ハラスメントがあるか」等です。
健康診断やメンタルチェックも良好、ハラスメントもない働きやすい職場なのに離職の問題が多く起きているという場合は、第一の欲求である「生理的欲求」を満たせていない可能性が高い(給料が少なく生活が苦しい)と考えることができます。
マズローの5段階欲求に職場環境を合わせて考えることで、職場環境のどこを改善すれば良いのか、離職の原因を特定しやすくなります。
こういった理由でこの記事ではマズローの5段階理論を引用しながら説明しています。
それではいよいよ、職場環境を改善する5つのSTEPについて見ていきたいと思います。
働きやすい職場にするSTEP1:生理的欲求を満たす
まずは生理的欲求について見ていきましょう。
生理的欲求は、生存のために必要な基本的な欲求です。STEP1ではこの生理的欲求に紐づく要素を見直しもしくは追加します。
給料
従業員を募集している地域での生活費を考えた際に十分か・従業員を募集している地域での他社企業と比べた際に低すぎないかを確認しましょう。
先ほどの例の続きですが、1LDKの賃貸の家賃相場が6万円の地域と3万円の地域では生活に必要なコストが大きく異なります。
この辺りも踏まえた上で、「生理的欲求を満たせているか」を考えて見ることがおすすめです。
福利厚生
福利厚生も重要な要素です。例えば7万円の家賃の家に1万円で住める家賃補助がある場合、その従業員の生活基盤における安定感は格段に上がるでしょう。
これによって「生理的欲求を満たせる」確率が大幅に上がります。
生理的欲求を満たす重要性
繰り返しになりますが、マズローの欲求が下位から満たされていくことを考えると、まずは「従業員の生理的欲求が満たせているか」を最初にSTEP1で考えることがおすすめです。
このSTEPに沿って考えることで、何が原因で従業員が辞めているのかを特定しやすくなるメリットがあります。
どんなに働きやすいコミュニケーション施策や褒める施策を行なったとしても(承認欲求を満たしたとしても)、「この給料では生活できない」と感じた従業員はやむなく離職を選ぶのではないでしょうか。
働きやすい職場にするSTEP2:安全欲求を満たす
次に安全欲求について見ていきましょう。
「安全欲求」とは身体的、精神的な安全が保証されている状態を求める欲求であり、労働環境の安定や雇用の保障、心身の健康管理などが該当します。
STEP2ではこの安全欲求に紐づく要素を見直しもしくは追加します。
労働時間
過剰な残業はないかを確認しましょう。残業時間が多くなっているメンバーがいる場合は、適切な労働時間を守る仕組みを導入することが有効な対策となります。
心身の健康状態
従業員の健康状態やメンタル状態に問題がないかを確認しましょう。デジタルツールを活用して定量的に見える化したり、専門家と連携することも有効な対策となります。
ハラスメント対策
ハラスメントが起きにくい組織状態かを確認しましょう。社内ルールの見直しや、ハラスメント窓口を設けることで安心感が高まります。
安全欲求を満たす重要性
これらの確認及び、必要に応じて足りない部分の取り組みを行うことで、「安全欲求」を満たすことが可能です。
残業時間はほとんどない、健康診断やメンタルも良好、ハラスメントもない働きやすい職場なのに離職の問題が多く起きていると言う場合は、STEP1が満たせておらずバケツに穴が空いている可能性が高いです。
まずはSTEP1の見直しから行いましょう。
働きやすい職場にするSTEP3:所属/愛の欲求を満たす
次に社会的欲求について見ていきましょう。
「所属と愛の欲求(社会的欲求)」とは、所属や愛情、仲間との繋がりを求める欲求です。職場においては、チームの一員として認められ、良好な人間関係を築くことが、従業員の働きやすさに大きく影響します。
STEP3ではこの所属と愛の欲求に紐づく要素を見直しもしくは追加します。
オープンなコミュニケーション
オープンな社内コミュニケーションができているかを確認しましょう。足りない場合は、定期的なミーティングやチームビルディングイベントを通じて、従業員同士の繋がりを強化しましょう。社内SNSやコミュニケーションツールを導入することも有効な対策となります。
上司と部下のコミュニケーション
上司と部下が適切な頻度・方法でコミュニケーションができているかを確認しましょう。足りない場合は、定期的なミーティングの機会や1on1の仕組みを導入を検討しましょう。
部門を超えたコラボレーション
部門間同士でのコミュニケーションやコラボレーションに問題がないかを確認しましょう。足りない場合は、シャッフルランチへのランチ代補助や、サンクスカードの導入などを検討してみましょう。
働きやすい職場にするSTEP4:承認欲求を満たす
次に承認欲求について見ていきましょう。
「承認欲求」とは、自分が他者から認められたい、評価されたいという欲求です。職場では、努力や成果が適切に認められることが、従業員のモチベーション向上に繋がります。
STEP4ではこの所属と愛の欲求に紐づく要素を見直しもしくは追加します。
成果の見える化
従業員の成果や日々の頑張りを見える化できているかを確認しましょう。足りない場合は各職種に応じて日々の成果や頑張った仕事を見える化する仕組みを取り入れましょう。OKRを設定してデジタルツールで管理する、日々の日報を社内SNSにして上司や他メンバーがイイネやコメントをできるようにするなどが有効な対策となります。
フィードバックの実施
従業員の成果や日々の頑張りに適切なフィードバックができているか確認しましょう。足りない場合は、上司と部下の定期的な1on1や評価面談を行う仕組みを整えましょう。
報酬の見える化
特に良かった取り組みや、年間・四半期での達成者に適切な報酬があるか確認しましょう。報酬は金銭的なインセンティブだけではなく、社内表彰などの形でも良いでしょう。「日々の成果や頑張りを会社はしっかり見ているんだ」と従業員が思える職場環境は、従業員の士気を高めるでしょう。
働きやすい職場にするSTEP5:自己実現欲求を満たす
最後に自己実現欲求について見ていきましょう。
マズローの欲求の最上位にある「自己実現欲求」は、自分の能力を最大限に発揮し、自己の成長を感じることを意味します。働きがいのある職場を作るためには、従業員が自己実現を達成できる環境を提供することが大切です。
STEP5ではこの自己実現欲求に紐づく要素を見直しもしくは追加します。
キャリア開発の支援
従業員のスキルアップを支援する研修や教育プログラムを提供し、自己成長を促進する仕組みがあるかを確認しましょう。足りない場合は、キャリア面談の仕組みやE-ラーニングを活用した学習支援かんん今日などを検討しましょう。
キャリアパスの明確化
従業員のキャリアパスについて、適切に情報を従業員に伝えることができているか、またキャリアパスを支援する制度があるかを確認しましょう。足りない場合は、キャリアパスの選択肢の明確化や、キャリアシートを運用する仕組みを整えていきましょう。
新しい挑戦の機会を提供
プロジェクトやリーダーシップの機会を通して、従業員が新たな機会に挑戦することができる環境かを確認しましょう。足りない場合は、社内公募の仕組みや昇進にあたる要件の明確化などを外部コンサルタントなどの知見を借りながら仕組みを整えていきましょう。
「自己実現欲求」への対策の前に
以上が「自己実現欲求」に紐づく要素と、足りない場合の対策です。
ただし、ここまで見てきたようにいくら「キャリア開発の機会」や「キャリアパスの明確化」に力を入れても、そもそも明日の生活が不安なほどに給料が低かったり、パワハラに怯える職場では従業員が働きやすい職場環境とは言えないでしょう。マズローの欲求の最上位にある「自己実現欲求」を満たす前に、下位の欲求を適切に満たすことができているかまずは見直すことがオススメです。
まとめ:働きやすい職場にするために
いかがでしたでしょうか。この記事では、「マズローの5段階欲求をベースにした働きやすい職場を実現するための5STEP」について解説しました。
ここまで見てきたように、マズローの5段階欲求が基本的な欲求から満たされるという点に従うことで、職場環境のどこから改善していくべきなのかを特定することが可能です。
今回の記事を通して、皆さんの会社の職場環境のどのような点に改善点があるのかを探すヒントになればと思います。